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当日は、司会進行は徳洲会千葉西総合病院健康管理センターの小西明美先生にしていただきました。最初に私から講座の趣旨説明をしました。私は、2002年に日本性差医学医療学会の前身である性差医療・医学研究会(2008年に日本性差医学・医療学会へと発展)とNPO性差医療情報ネットワークを起ち上げました。性差医学・医療研究会及び日本性差医学・医療学会では、医療者を中心として性差に関する学際的な学会を目指しています。NPO性差医療情報ネットワークは、全国で雨後のタケノコのように誕生する「女性外来」の担当医を対象とした産科、内科、精神科などのセミナーを開催し、女性外来担当医の方々を応援してきました。ことに、漢方医学については、私自身が千葉県立東金病院女性外来を担当してすぐに、西洋医学のみで女性外来を受診される患者さんに対応することは難しいと気づきましたので、2004年からは、女性外来担当医ならびに漢方を学びたい女性医師を対象に、株式会社ツムラの支援を受け「女性医師のための漢方セミナー」を全国展開してきました。
私も今年81歳、いつまで現役で頑張れるか分かりません。次の世代へのバトンを繋げなくてはなりません。学会の方は、初代理事長の鄭 忠和 鹿児島大学大学院・循環器呼吸器代謝内科教授から下川宏明 東北大学大学院循環器内科教授、秋下雅弘東京大学大学院医学系研究科加齢医学教授と引き継がれ、2024年1月の総会で、片井みゆき政策研究大学院大学保健管理センター教授が第4代の理事長に指名されました。学術集会は、第17回を迎え、井川房夫島根県立中央病院 医療局次長(脳神経外科)の下、広島で1月27日、28日の2日間にわたり開催され、成功裡に終わっています。
女性外来は、2001年に鹿児島大学、千葉県立東金病院で開設されてから、メディアも大きく取り上げてくれたこともあり、各県での公立病院での開設が続き、一時は全国で雨後のタケノコのように増え続け、2005年1月の時点では、43の大学医学部、119の公立病院、23の社保・労災・健保病院 、117の私立病院、合わせて356施設に上っていました。しかし、全ての施設が「性差医学・医療の実践の場としての女性外来」を正しく認識しての開設とは言えず、担当医の転職、退職、必要性への疑問などにより、徐々に減少し、2018年には201施設まで落ち込みました。
そのような中、私が蒔いた種「女性医師のための漢方セミナー」に参加してくださった女性医師の方々は、 漢方医学・性差医学という新しい治療ツールを手にされて、各地でしっかりと根を下ろし頑張り続け、名医の名をほしいままに活躍されています。その実績が、政府における男女共同参画の動きが本格的になってきた今、女性外来への回帰現象を起こし、その数が再び徐々に上昇しています。
私が、「女性医師のための漢方セミナー」を立ち上げた頃は「なんで天野先生が漢方?」「エビデンスがないよね」などと、散々な言い方をされましたが、今では、医師の8割が何らかの漢方処方をしているというのが現状です。科学の発達とともに、漢方における効能のメカニズムを詳細に解明することが可能となってきたことによります。漢方にはエビデンスがないと言い続けてきた先生方も、使ってみればよく効く漢方に脱帽せざるを得なかったというところでしょうか
古来、「女の病は男に比して十倍治し難し」といわれ、女性の症状が複雑で治し難いが故に、漢方では観察研究が進み処方も発達しました。性差はもとより体質や性格、生活環境も考慮する漢方の考え方は、まさに「傾聴と共感」を基本にその人全体をみる女性医療のコンセプトと一致します。漢方に興味を持つと、自分自身の心と体に自然に目が向きます。それこそ、すこやかな人生を送るための基本姿勢だと私は思っています。
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]]>今年もよろしくお願いいたします。
昨年は、お正月の発信以来ブログの発信ができず申し訳ございませんでした。
昨年の初頭のあいさつで、80歳の壁について触れました。
2022年5月(79歳)の連休に経験した治打撲一方による血圧の上昇、7月(79歳)は大腸カメラの際に前投与された下剤による虚血性腸炎と、目には見えないけれど体の中で、確実に薬の代謝が衰えてきているのではないかとお話しさせていただきました。
そして、2023年も女性外来オンラインブログ、女性外来オンラインセミナー、女性外来オンラインチャンネルで発信を続けますので、応援をお願いしますと言ったのですが、実行できたのは女性外来オンラインチャンネルとセミナーだけでした。
2023年の1年間は整形外科の疾患に振り回された1年でした。
2022年12月に入り、体調の違和感が生じました。きっかけは、右の臀部に軽い痛みがあり、整体やいつも通っている加圧トレーニングスタジオでの施術を受けたところ、どうもさらに悪くなっていき、痛みのために歩いたり、立ったりするのがつらくなりました。自分なりに色々考えた末、パーソナルトレーニングの際に使用しているワコールのスポーツタイツを日常にも装着するようにしました。整体や加圧トレーニングは、しばしお休み。12月31日には、歩くことには支障がなく、タイツも必要のない日が出てきました。明けて2023年、体調もほぼ100%回復した感じで、21日に加圧トーニングに久しぶりにいきました。以前のように体が本当に軽くなったという感じなし。
うん?おかしいなと思っていたところ、24日、右膝関節の内側部に鋭い痛み出現。
具合の悪いことに、25日は21世紀財団の講演、28日は日本総合健診医学会の講演、2月4日~5日は日本性差医学医療学会と静風荘病院への通勤以外にも出歩くことが多く、シップと痛み止めでは、一向に良くならず、整形外科受診。
診断は「膝のX線は、3年前と変化なく軽い変形性膝関節症ですね。シップ出しておきます。2週間ぐらいで良くなるでしょう」
とのこと。ところが、実際は少し良くなったかなと思うとまたぶり返すの繰り返しで、らちが明かない。
私は大学時代にスキーで左足骨折のため1ケ月虎の門病院に入院したことがあり、それ以来、左下肢~左殿筋部は右に比べ細かったのですが、4月に「あれ、右大腿部の筋肉が明らかに左に比べて細くなっている!と気が付き愕然としました。
5月29日、順天堂大学練馬高野台病院整形外科受診。金教授のご意見も「軽い変形性膝関節炎、MRIを取るまでもないでしょう」とのこと。ああよかったと喜んだのもつかの間、
6月6日、静風荘病院からの帰途、後ろから来た来たバスに乗ろうとして走り出したところ、右ひざに強い痛みが走り座り込んでしまいました。明らかに何かが起こったと自覚。翌日、やっとの思いで、順天堂大学練馬高野台整形外科の午後の予約を取り受診。診断は「右膝半月板損傷」。ヒアルロン酸の注射をしていただいて帰宅。「次回からのヒアルロン酸の注射は大学病院の方では行わないので、近医を受診してください」で終わり。
たまたま静風荘病院の同僚の小宇佐一夫先生(東京大学医学部昭和48年卒、消化器外科)が、やってくださるとのことで、週に1回2回目から5回目のヒアルロン酸注射をしていただきました。膝の痛みはすっかり良くなりました。
ところが、大腿四頭筋がそげてしまったこと、1年間右下肢をかばいながら変な歩き方をしたせいでしょう。右の臀部、右大腿部外側、膝の痛みが出ては消えが続きました。トレーナーさんの言うところによると、「右への体重の荷重ができてないですね。まだ筋力が元に戻っていないです」と言われ続け、て、リハビリに励み、やっと普通に歩ける(まだ怖くて走れません)ようになった矢先、12月2日、食卓の脚に左足の薬指をぶつけ骨折。痛みはさほどではないのですが、むくみがひどくて靴がはけず、外出はままならず。通勤は、秘書さんのご厚意に甘えて車にご一緒させていただきました。1月15日現在、普通に歩けています。やれやれ、この年で歩けない状態が続くと、あっという間に下腿の筋肉がそげることを思い知りました。現在は、週に2回パーソナルトレーニング、週に1回全身のマッサージとリフレクソロジーに通い、何とか骨と筋肉のバランスをいい形で保とうと心がけています。
若い頃の障害が年を経て、副作用的な(自分でも気づかず、一方をかばうための弊害など)変調をもたらすのですね。今回、学んだことは膝の痛みを起こすのは関節だけではないということ。筋肉が大事。普段の歩き方、姿勢、運動習慣の有無、栄養、家の空間など気をつけなくてはいけないことが目白押しです。
その年齢にならないとわからないからだの変化がありますね。小さな変化にも耳を傾けて、取るべき最善の方法を考えなくてはいけません。これからは、身近な経験をどんどん発信するようにします。
皆さん、今年もお体に気をつけ楽しい日々を送ってください。
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]]>昨年の11月、12月にブログを更新できず、2023年になってしまいました。昨年は、ユーチューブ・ブログ・セミナーなど色々やってみました。それなりの反響はあったように思います。今年もよろしくお願いいたします。
昨年の11月16日で80歳を迎えました。
10月3日で、松戸市立総合医療センター女性外来を辞職しました。3年ほど前から、毎週月曜日に担当していた市立総合医療センター女性外来への通勤が自分自身に重荷になって来ました。自宅から2時間半かかる距離の往復に、気持ちがついていかなくなったというのが正直なところです。ただ、自分を信頼し、通院してくださる患者さんの気持ちを考えると、なかなか、辞めますと言い出しづらく、悶々としていましたが、順天堂大学医学部付属浦安病院で長年にわたって女性外来を率いてこられた栗原由美子先生がバトンタッチをしてくださることになり、思い切ることができました。私の勤務先は埼玉県新座市にあります静風荘病院のみとなります。
10、11月は慢性疲労症候群(中等症以上の方)で、松戸市立総合医療センターから静風荘病院への転院を希望される方の事務手続きと、11月27日に開催された、第1回和温療法学会教育講演の準備とで、忙しすぎて、心がつぶされそうな毎日が続いていました。
12月に入り、やれやれと思っていた矢先に、体調の違和感が生じました。きっかけは、右の臀部に軽い痛みがあり、整体やいつも通っている加圧トレーニングスタジオでの施術を受けたところ、どうもさらに悪くなっていき、痛みのために歩いたり、立ったりするのがつらくなりました。自分なりに色々考えた末、パーソナルトレーニングの際に使用しているワコールのスポーツタイツを日常にも装着するようにしました。整体や加圧トレーニングは、しばしお休み。12月31日現在、歩くことには支障がなく、タイツも必要のない日が出てきました。
振り返ってみると、今年は自分自身の加齢現象を思い知らされることが、多々ありました。
最初は、4月の健診で「血圧が146/72です。少し高めです」と言われましたが、その時は、気にも留めませんでした。5月の連休が始まる1週間前に、ひばりヶ丘駅で発車間際のバスに乗ろうと駆け出して、見事に転び、おでこをいやというほど打ち、目の上からおでこまでの皮下出血でパンダ状態になりました。当然しっかりと皮下出血部位を冷やしつつ、私が服用したのは漢方の「治打撲一方」。まさに、打撲に対する漢方です。
5月の連休は、久しぶりに長野県上田市の鹿教湯温泉へ行きました。何げなく、温泉に入った後に血圧を測定すると200/95!! 何回測っても似たような数字が出て、血圧計が壊れているのかと思い、他の方が測定されるのを待ってのぞいてみると、まったく正常。これは一大事と初めて気づき、原因を考えると、今飲んでいる漢方しか考えられないと思い当たり、即中止。血圧が正常に戻るのに2週間かかりました。
次は、大腸カメラでの1件。7月1日に大腸カメラの予約があり、先立つ手順として食事の注意や便秘薬の服用についての注意事項がありました。その通りきちんと実行し、6月30日の就寝時にラキソベロンとプルセニドの2種類の便秘薬を飲みました。7月1日0時ごろから腹部の違和感、疼痛などが始まり、トイレに入ったり出たりを繰り返しつつ、6時に下血がありました。「ちょうど今日大腸カメラなので、何が起こったかわかるのでいいかな」と思いつつ、大腸カメラを受けました。「虚血性腸炎」との診断。大腸の急激な収縮がきっかけになったのではという主治医のお話でした。大腸の内壁にきれいに帯のような出血が認められ、担当医からは「来年からは、当院では大腸カメラは引き受けられません」とのご託宣。
実は、今から5年前、75歳を迎えたときのことを思い出しました。日常の生活習慣で変えたことは何もなかったにもかかわらず、11月から翌年1月までで6㎏も体重が減ったのです。大きなお尻が半分の大きさに縮小してしまい、椅子に座るとお尻が痛くなりました。また、その後の3ケ月で、3回の虫垂炎発作に見舞われました。3回とも抗生剤の点滴で改善し、以後は、発作はありません。嘘か本当かわかりませんが、消化器外科の先生に「3回発作があったらその後発作は起こらない」と言われましたけど、確かにここ5年間虫垂炎の気配はありません。
この時私が確信したことは、「50歳で閉経、75歳で後期高齢者」、自分の意思で変えることのできない自然の摂理があるということでした。
そうして、迎えた80歳の壁。転倒と漢方薬による急激な血圧の上昇、大腸カメラの便秘薬での虚血性腸炎、この二つの出来事の背景には、薬の代謝に関わる腎臓や肝臓に何らかの変化が来て、薬による副作用が出やすくなっていると考えられます。通常の人間ドックの検査では肝機能も腎機能も正常ですが何らかの変化が進行しているのでしょう。
そして、12月に起こった出来事は、整体師の方が良かれと思ってやってくださったストレッチが、私にはきつすぎたように思いますし、パーソナルトレーニングでの筋膜リリースもきつすぎたようです。75歳でお尻の筋肉がすとんと落ちたように、何らかの変化が年老いた自分の筋肉に起きていて、ストレッチも筋膜リリースもディメリットがメリットを上回ったと思われます。
幸いにスポーツタイツの着用で9割がたよくなっています。12月29日から来年の1月3日まで、長野県の鹿教湯温泉に逗留します。ここで、そろりそろりとストレッチ体操からリンパマッサージへと自分の筋肉の声を聞きながら私の思う治療を進めていきたいと思っています。今のところ鎮痛剤は使わずに済んでいます。
その年齢にならないとわからないからだの変化がありますね。小さな変化にも耳を傾けて、取るべき最善の方法を考えなくてはいけません。これからは、身近な経験も発信するようにします。
皆さん、今年もお体に気をつけ楽しい日々を送ってください。
2023年も女性外来オンラインブログ、女性外来オンラインセミナー、女性外来オンラインチャンネルで発信を続けますので、応援をお願いします。
天野惠子
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既に、女性外来オンラインのホームページで慢性疲労症候群について読んでくださった方も多いと思いますが、この病気は、ウイルスや細菌による感染症に罹患後、急速に進行する疲労感、ブレインフォグと呼ばれる思考力・集中力・記憶力の著明な低下、全身痛や頭痛、睡眠障害を中核症状とする慢性疾患です(図1)。現在のところ、客観的診断基準も治療法も確定していません。
図1

最近、新型コロナウイルス感染症の後遺症(Long COVID)による慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎と思われる患者さんが、毎月、静風荘病院に入院してこられます。私が2006年から診てきた慢性疲労症候群の患者さんの範疇に入る病態ではないかと思い、診察・治療を行っています。
中国の湖北省武漢市で、第一例目の新型コロナウイルス感染者の報告がされたのは、2019年12月8日、日本国内で初めて感染者の報告がされたのは、2020年1月です。
当初は、コロナウイルスの発生源や感染力・重症化率・治療などの研究報告が多かったのですが、最近は、感染後の後遺症に関する研究がみられるようになってきました。最近の報告を拾い上げてみました。今回は、Long COVIDの定義と実態についてです。
Long COVIDの定義: 2021年12月に世界保健機関(WHO)による臨床症例の定義が、
「新型コロナウイルス感染症後遺症は、SARS-CoV-2感染の可能性があるか、または確認された病歴を持つ個人に起こり、通常は発症から3カ月経過後に、少なくとも2カ月間は続いていて、他の診断名では説明することができない症状がみられる。一般的な症状は、疲労、息切れ、認知機能障害などであるが、これらに限定されるものではなく、一般的に日常の機能にも影響を及ぼす。症状は、急性COVID-19のエピソードから最初の回復後における新規発症、または最初の症状からの持続という可能性もある。症状はまた時間の経過とともに変動することも、再発する可能性もある。」とジャーナルThe Lancet Infectious Diseasesに載されました1)。
Long COVIDは、呼吸器系障害、神経系障害、認知障害、精神障害、代謝障害、心血管障害、消化器障害、倦怠感、疲労、筋骨格痛、貧血など、ほぼすべての臓器系に影響を及ぼします。一般的には、疲労、頭痛、呼吸困難、無嗅覚症、刺激性異臭症(嗅覚の機能不全)、筋力低下、微熱、Brain Fog(記憶・記銘力・集中力の低下、文字化けなど)、などさまざまな症状が報告されています。そのため、今のところ、使用される定義は、調査対象の母集団、調査する期間によって異なり、その病気の定義も機構もまだ不明と言わざるを得ません。全体としては除外診断による診断となっています。
Long COVIDの実態について:
1.オランダ:医学雑誌Lancet(2022; 400: 452-461)2)に、オランダ・University of GroningenのAranka V. Ballering氏らによるLong COVIDに関する報告がありました。同国の約8万例を対象に23の身体症状※について1年4カ月の間に24回評価し、従来の研究では考慮されなかったCOVID-19発症前の症状や同期間中のSARS-CoV-2非感染者の症状などをも考慮し、それらの因子を補正してLong COVID有病率を検討した報告です。結果は主に2つ。
A.成人COVID-19患者の8人に1人(12.7%)がLong COVIDを経験していた。
B.各症状の重症度(過去7日間の症状による苦痛の程度)を1(全くない)~5(極めて重度の苦痛)の5段階のスコアで評価し、COVID-19診断前後およびCOVID-19患者群と対照群で比較した結果、COVID-19患者群において診断後90~150日の時点で診断前および対照群と比べて重症度スコアが有意(P<0.001)に高かった症状は、胸痛、呼吸困難、呼吸時の疼痛、筋肉痛、味覚・嗅覚障害、四肢の刺痛感、咽喉頭異常感、熱感と冷感の交互出現、腕や脚のだるさ(重い感じ)、全身倦怠感だった。
※頭痛、めまい、胸痛、腰痛、悪心、筋肉痛、呼吸困難、熱感と冷感の交互出現、四肢の刺痛感、咽喉頭異常感、全身倦怠感、腕や脚のだるさ(重い感じ)、呼吸時の疼痛、鼻水、咽頭痛、乾性咳嗽、湿性咳嗽、発熱、下痢、腹痛、味覚・嗅覚障害、くしゃみ、眼の痒み
残念なことに、この研究ではBrain Fogに関する設問がありません。
2.日本:医学雑誌 2022年4月のScientific Reports(Long COVID occurrence in COVID-19 survivors | Scientific Reports (nature.com) 3)に、広島大学からの報告が出ています。
この研究は視点が、コロナ罹患後の心理的苦痛、業務遂行上の障害、コロナに関連した差別や偏見となっています。アンケート調査が行われたのは2020年8月~2021年3月まで。
127例のコロナ罹患後の患者さんが対象。52%の患者がコロナ罹患後後遺症を有していました。(平均罹患日数29日)。頻度の多い症状としては、嗅覚障害(15.0%)、味覚障害(14.2%)、咳(14.2%)で、リスク因子としては、高齢者(60歳以上)が若年者(40歳未満)の3.63倍。心理的苦痛については、男性の17.9%、女性の45%にみられました。業務を遂行する上での支障については29.1%の患者で報告があり、偏見や差別については、43.4%の患者が「あった」と答えています。
3.厚生労働省:厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き、別冊・罹患後症状のマネジメント」4)に、日本のLong COVIDに関する追跡調査としては、1,066例の入院歴のある患者を、2021年1月から2022年3月まで追跡した報告が掲載されています。厚生労働省研究報告「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究」(研究代表:慶應義塾大学呼吸器内科の福永興壱教授)によるもので、ポイントは3つ。
1.COVID-19の重症度で定められた軽症と中等症の患者が多い。
2.罹患後症状が1つでも存在するとQOLが低下している
3.診断12ケ月後でも、罹患患者全体の30%程度に、1つ以上の罹患後症状が認められたものの、代表的な24症状の多くは、その有症状者の頻度が経時的に低下傾向を認める。
(図2)
図2 代表的な罹患後症状の経時的変化

私のところを受診される患者さんの主たる症状は、疲労・倦怠感とまるで脳に霧や靄(もや)がかかったかのようにぼんやりとして、見聞きしたものが頭に入ってこない、自分の考えや発言がまとまらない、頭が回らず作業に集中できない、関節痛・筋肉痛、筋力の低下、睡眠障害です。まさに、ウイルス性疾患への罹患後に発症する慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の患者さんの症状とそっくりです。
絶対これで治りますという確立した治療法はありません。
和温療法(全身・脳の血流をよくする)、経頭蓋磁気刺激療法、上咽頭擦過治療、ステロイドに代表される免疫疾患治療薬、鎮痛薬・睡眠薬などの薬物治療に加え、最近の患者さんからの情報では、鍼灸、高圧酸素療法、水素ガスの吸入等も効果があるとのことです。
参考文献:
3.Long COVID occurrence in COVID-19 survivors | Scientific Reports (nature.com)
4.000952747.pdf (mhlw.go.jp)(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き、別冊・罹患後症状のマネジメント
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]]>女性ホルモンのエストロゲンには、骨吸収を緩やかにする効果があります。女性は、50歳ごろに閉経を迎えると、エストロゲンの減少のため骨吸収のスピードが上昇し、骨密度の低下に拍車がかかるようになります。
骨密度の低下だけでは、特に症状はありませんが、脊椎圧迫骨折や大腿骨近位部骨折を起こすと、受傷後の痛みや、安静による筋力低下などにより、歩行が困難となり、車いすや寝たきりになるかもしれません。女性外来では、閉経後一度も骨密度の測定をしたことがない方には、骨密度の測定をお勧めしています。骨密度の測定には、dual-energy X-ray absorptiometry(DXA法)を用いて、腰椎と大腿骨近位部を測定します。
「原発性骨粗しょう症」の診断は、低骨量をきたす骨粗しょう症以外の疾患、または続発性骨粗しょう症の原因を認めないことを前提として、「骨密度が若年成人平均値の70%以下」 または 「骨密度が若年成人平均値の70~80%(骨量減少)で、脆弱性骨折の既往を伴う」 場合に骨粗しょう症と診断されます。
若年成人平均とは、腰椎は20~44歳、大腿骨近位部は20~29歳の平均です。
脆弱性骨折とは、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折を言います。例えば知らないうちに腰椎骨折を起こしていたとか、くしゃみをしたら肋骨骨折になったなどです。
閉経後の骨粗鬆症の治療には、骨折を予防するための生活習慣の改善、内服薬や注射薬による治療があります。治療は原発性骨粗しょう症の診断基準を満たした場合、もしくは骨量減少症でも骨折の危険が高いと判断された場合に薬物療法が開始されます。
表1に、現在使われている骨粗しょう症治療薬の有効性の評価一覧を示します。
実は、現在家庭画報に「天野惠子先生のすこやか女性外来」を連載しています。10月号(8月に売り出されます)に骨粗しょう症を取り上げることになり、はじめて日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会、骨粗しょう症財団による「骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2015年版」を通読しました。そこで、自分が服用しているボノテオが「腰椎骨折は抑制するが、大腿骨近位部骨折については、抑制するとの報告はない」のC判定であることを知り、愕然としました。内科医は、ビスホスホネートはどの薬も同じ効果があると思っている医師が多いのではないかと思います。

骨密度について
A判定:骨密度の上昇効果あり
B判定:上昇するとの報告あり
C判定:上昇するとの報告はない
骨折発生抑制効果について
A判定:抑制する
B判定:抑制するとの報告がある
C判定:抑制するとの報告はない
出典:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン
2015年版、158ページ
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]]>The post 心療内科と精神科はどう違うのか first appeared on 女性外来オンライン[JGO].
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そこで、今日は「精神科と心療内科の違い」についてお話したいと思います。
心療内科と精神科はいずれも「心が原因となる病」を治しますが、簡潔に言いますと、下記のように説明できます。
1.精神科は、心が主な原因となり、「眠れない、不安、うつ、人と会うのが嫌、幻覚、幻聴、妄想」などの心に関わる症状で困っている方を取り扱います。
2.心療内科は、心が主な原因となり、「しんどい、怠い、痛い、血圧があがった、喘息が悪化した、糖尿病が悪化した」など、身体の不調が出現又は悪化した方を取り扱います。一般的に心身症と言われる症状の方です。
医学の歴史の中で、精神科は長い歴史を有します。
一方、心療内科が日本に登場したのは、1961年、九州大学医学部に精神身体医学研究施設が設置されたことに始まります(約60年前ですね)。1963年には精神身体医学講座に昇格し、心理療法も併せ行う内科という意味で、診療科名を「心療内科」として、診療を開始し、初代教授に心身医学のパイオニアである池見酉次郎先生が就任されました。
私は、1967年に東京大学医学部を卒業しましたが、その時には、まだ心療内科は講座としてはありませんでした。1972年に東京大学医学部分院(文京区目白台にありました)に心療内科が診療科として開設され、1984年に、石川 中先生が初代診療科教授に就任されました。1986年に第2代末松弘行教授が就任された後、1993年に心身医学講座に昇格しました。1996年には、第3代久保木富房教授が就任されましたが、東京大学医学部付属病院の分院と本院の統合が進み、2001年6月22日に、分院は閉院され、心療内科は本院へ移転しました。その後、2005年に第4代赤林朗教授が就任され、現在に至ります。現在、東京大学医学部心療内科科長は吉内一浩准教授が担当されていますが、今回、東京大学医学部心療内科のホームページを開けてみましたら、吉内先生の「科長ご挨拶」が、とても分かりやすく心療内科の立ち位置を説明していますので、ご紹介したいと思います。
科長ご挨拶 | 当科について | 東京大学医学部附属病院 心療内科 (umin.ac.jp)。
当科は、全国でも数少ない「心療内科学」の教室として、最新の知見を取り入れながら、最適な医療の提供と、そのための研究と教育を日々行っております。
ちなみに、「心療内科」という言葉だけは有名になっていますが、本当の「心療内科」はまだまだ知られていないということを感じております。「心療内科」は、ストレス関連疾患、特に「心身症」を診療する診療科として、わが国において、1963年に九州大学に誕生しました。この「心身症」という病気は、ストレスが関連する「身体疾患(からだの病気)」で、「精神疾患(こころの病気)」ではありません。
心療内科の専門性は、大きく分けて、2つあると考えております。
1つ目は、「患者さんを全人的に理解する」ということです。つまり、心身両面の評価と、さらに、「こころ」と「からだ」の関連を評価することによって、疾患・症状だけではなく、環境をも含めた患者さん全体を理解する努力を行います。つまり、心理・精神面の評価と身体面の評価を個々に行うことだけでは得られない、心身相関の評価とアプローチという部分を含み、これは、心身医学という学問を基盤に持つ「心療内科」ならではの専門性ということが言えます。
2つ目は、薬物療法以外に心理療法を用いるという点です。心療内科が「心理療法を併用する内科」という名前の由来を持つ通り、心療内科医は、複数の心理療法に精通し、患者さんの状態に合わせて併用することができます。具体的には、生活習慣病などの「心身症」の患者さんを中心とした「行動変容」から「ストレスによって心身に不調を来した」状態まで対応可能です。
このように、心療内科の専門性が「特定の疾患」ではない点で、分かりにくくなっています。しかし、今後の医療においては、「治癒からケア」の比重が大きくなることが予想され、医療費削減の観点からも心理療法のトレーニングを受けた心療内科医が現代の医療に寄与できる部分は大きいと自負しております。
そして、東京大学医学部附属病院心療内科では、大学病院という特性を活かし、より専門性の高い診療・教育・研究を行っています。
診療に関しては、心身症の他に、身体的合併症が生命の危険にもつながる摂食障害、薬物療法だけでは治療が難しい生活習慣病、心身相関の要素が大きい「がん患者さんのこころのケア(サイコオンコロジー)」に力を入れています。
教育に関しては、卒前・卒後を含めて、心療内科に関する教育を、学内外の医学生、医師に加えて、心理士等にも積極的に行っております。
研究に関しては、従来の医療を変えるべく、IT機器を用いた臨床研究を中心に行っております。
「目の前の患者さん、ご家族はもちろん、社会のために貢献をしよう」という理念のもと、最適な医療の提供を行うよう努力するとともに、「新しい医療を創る」という目標を共有して、教室員が一丸となって日々精進しておりますので、引き続き、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
科長 吉内 一浩
、
東京大学医学部心療内科科長吉内先生のご挨拶を引用させていただきましたが、心療内科がどのような患者さんにどのような治療を行っているのかをお分かりになっていただけましたでしょうか?
心療内科が扱う病気や障害としては、自律神経失調症、片頭痛、仮面うつ病、不登校・出社拒否、発達障害、過換気症候群、パニック障害、摂食障害、円形脱毛症、緩和ケアなどがあげられます。
精神科は精神疾患を専門に扱う診療科です。扱う疾患名としては、うつ病、躁うつ病、適応障害、統合失調症、認知症、解離性障害、強迫性障害、睡眠障害、摂食障害、パーソナリティ障害、発達障害、パニック障害、PTSD、アルコールや薬物の依存症などがあります。睡眠障害や摂食障害など、心療内科とかぶるところもあります。
ストレスが原因で心身の不調を感じ、内科などを受診しても異常が見当たらない場合、心療内科と精神科のどちらを受診したらいいのか迷うようでしたら、診療科目に心療内科・精神科の両方を含んでいる病院への受診をお勧めします。
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そこで色々調べてみました。
先頭を切って走っているのは、NHKの取材班でした。取材班は視聴者から寄せられた声をもとに「生理の貧困」から「更年期」へと取材を広げていました。そして「取材から見えてきたのは、女性と男性の“違い”を十分に考慮せずに作られた制度や仕組みが定着している社会の姿でした。」と語っています。NHKが企画するアンケート調査については、答える側も真面目に答える傾向が高いと私も思っています。
その中で、今回は2022年3月に更年期の治療にあたっている医師を対象として行ったアンケート調査の結果について考えさせられたので、紹介したいと思います。
医者の4割近くが“自信ない”!? 更年期医療の課題とは (nhk.or.jp)
取材班は、医師専用コミュニティサイト「MedPeer(メドピア)」に登録している全国の医師を対象に、オンラインでアンケート調査を実施しました。
「更年期の疑いがある人を診察することがある」と回答した医師は709人(うち産婦人科医は184人)。この医師たちに患者にどう対応するか聞いたところ(複数回答可)、「自分で診療する」という割合が最も高く68%。「婦人科の受診を勧める」(42%)、「症状に応じて専門医を紹介する」(32%)、「他科の受診を勧める」(9%)、「他院を紹介」(2%)という結果でした。
更年期の疑いがある人を「自分で診療する」という医師は479人(うち産婦人科医は178人)に、診療の内容について聞いた結果は下記のとおりです。
さらに、今回の調査では、「更年期症状の患者を自分で診療する」とこたえた医師の中で、「積極的に診療したい」と答えた医師が40%いた一方で、「あまり診療したくない」という医師が43%に上ったそうです。「あまり診療したくない」理由を聞いたところ、特に多かったのが「訴えが多様で問診や診察、検査に時間がかかる」「診療にかける時間と診療報酬を考えると採算が合わない」「労力と報酬が見合わない」など更年期診療を取り巻く課題を指摘する声や、また「ひとりひとりに時間がかかるわりにお互いの治療達成感が得られない」「治療の手応えがつかみにくい」という悩み、さらに「外来がパンクしており、問診にじっくり時間をかけられない」という事情もあるとのことでした。
一方、救いは、「積極的に診療したい」という医師からは、「患者が増えている」「症状が劇的に改善するのを見るととてもやりがいを感じる」などの声もあったようです。
最後に、アンケートに回答した709人の医師全員に、「今後どんな医療や社会の仕組みがあれば医師として更年期の女性たちの力になれるか」を複数回答で聞いています。「更年期医療の専門家が多い婦人科と、他の科との連携」(71%)を挙げた医師が最も多く、「医学部教育の充実」(26 %)や「卒後教育・研修機会の充実(36%)」といった医師教育の必要性も挙げられています。
最後に私の感想です。更年期障害の医療については、私は、私自身が重篤な更年期障害を経験するまでは、まったくの無知でした。産婦人科医の仕事だと思っていました。しかし、経験して初めて、「訴えが多様で問診や診察、検査に時間がかかる」「診療にかける時間と診療報酬を考えると採算が合わない」「労力と報酬が見合わない」と言われていた、更年期診療を取り巻く課題を理解できました。更年期は急速なエストロゲンの変化がもたらす心身の急性期症状だけではなく、更年期が加齢変化のスタート点であることを踏まえ、加齢がもたらす諸病についても知識が無くては対応できません。精神・神経、循環器、消化器、呼吸器、内分泌、腎・泌尿器、皮膚、筋肉・骨にいたるまで、エストロゲン受容体の存在する臓器すべてで変化が起こることを知らなくては、患者さんに十分な説明ができません。
あるべき診療体形は「女性総合診療外来」です。産婦人科から他科への連携がスムースにいく体制が必要です。
次に、患者サイドから見た場合、「女性の一生は女性ホルモンに、男性の一生は男性ホルモンに左右されている」ことを、学校教育の段階で、男女ともに基礎知識として学ぶべきです。そもそも自分の症状が更年期によるものだと気づかない人が少なくありません。まずは正しい知識をもつ機会が必要です。
なぜ女性の平均寿命は男性に比べ長いのか。女性は、閉経年齢と言われる50歳近くまで、「産む性」としてエストロゲンに守られています。性差が最もはっきりしているのは動脈硬化です。男性では20代からすでに動脈硬化が始まっていますが、女性では、エストロゲンの抗動脈硬化作用により、更年期以降に動脈硬化が始まります。その結果、心筋梗塞、脳梗塞など動脈硬化が原因で引き起こされる病気の発症は、女性では男性に比べ遅いのです。高血圧、肥満、高脂血症、骨粗しょう症、糖尿病など生活習慣病と言われる病気の発症も、女性では、閉経とともに急増しますが、それも全てエストロゲンの欠乏による結果です。
医師も患者も性ホルモンと健康に関するリテラシーを上げることが必要です。
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]]>私は、1999年に、村山正博聖マリアンナ医大循環器内科教授が開催された第47回日本心臓病学会で、シンポジウム「女性における虚血性心疾患」を企画させていただきました。2000年9月には、医学書院から、シンポジウムでの講演者に加え、多くの医師の協力を得て、同名の書籍を出版しました。全国の国・公・市立大学医学部の循環器内科教授に読んでいただきたいと思い、献本しましたところ、「天野先生の言う通りだ。僕たちには何ができるか?」と問われ、「性差を考慮した医療の実践の場」として女性外来を立ち上げることを提唱しました。その心は「女性外来の立ち上げにより、女性が困っていながら、医療の現場で取り上げられていない疾患が、色々あるのではないか?」と感じたためです。
2001年5月、鹿児島大学医学部第一内科 鄭 忠和教授の発案により、鹿児島大学医学部付属病院に国立大学として初めての女性専用外来が立ち上げられました。9月には、千葉県立東金病院(平井愛山院長)に堂本暁子県知事の要請を受けて女性外来が開設されました。公立病院では第一号の女性外来です。担当してくださる医師は、千葉大学医学部医学科大学院へ在籍中の竹尾愛理先生。女性外来の受診依頼の電話は、ひきもきらず、専属の電話が置かれました。私は、2002年8月に6年間在籍した東京水産大学(現東京海洋大学)保健管理センターを辞し、千葉県衛生研究所所長 兼 千葉県立東金病院副院長として千葉県に赴任し、週に1回女性外来を担当することとなりました。
女性外来は、性差医学・医療の実践の場であり、複雑で多岐にわたる症状に悩まされながら、医師にも、家族にも理解されず苦しんでいる女性たちの良き相談相手となり、性差を考慮した医療の実践をとうして問題の解決に当たることをめざしています。女性外来の理想的なあり方は、性差医療・医学の知識をきちんと踏まえたうえで、患者にきちんと対応することです。しかし、一人の医師での守備範囲だけでは、問題を完全に解決できるとは限りません。女性センターとして、多くの分野にわたる女性医師が確保できれば、一番望ましい形で女性外来運用が出来るのですが、そのような施設は多くありません。そこで2002年に性差医療情報ネットワーク(New Approach to Health and Welfare:NAHW)を立ち上げ、女性外来を担当する医師が孤立しないよう、多くの提案をし続けてきました。ひとつには、多岐にわたる愁訴に対して有効な漢方治療の修得を目指したセミナーの開催です。また、婦人科疾患や、内科疾患の中でも性差の明瞭に存在する疾患(脂質異常症、片頭痛、骨粗しょう症など)についてセミナーを重ねてきました。同時に日本性差医学・医療学会(2002年8月に性差医療・医学研究会として立ち上げ、2007年2月に学会として発展)をとおして、日本人男女での健康と疾病における性差について学問的研究も推進してきました。
2002年、東金病院女性外来を担当することになり、東金病院の診療から見えてきたことは、大きく分けて下記の3つです。
このような状況に最もふさわしい診療方法は何かと考えた時、Narrative-based Medicineと「未病を防ぐ」「「心身一如」(しんしんいちにょ)を基本とする東洋医学、中でも漢方を学ぼうと考えました。担当する女性医師のスキルとして漢方を学ぶことが、診療の場で大きな力を発揮するだろうと考えたのです。実は、日本の医学教育に漢方が取り入れられたのは2003年です。2003年以前に卒業した私たちは、漢方を学ぶことはなかったのですが、私自身は、幼少のころから富山の薬売りの方が置き薬として置いて行かれた漢方薬のお世話になっていましたので、すんなりと思いつきました。平井 愛山東金病院院長に相談し、製薬会社ツムラを介して紹介されたのは、弱冠31歳、日本大学医学部付属病院東洋医学科の木下優子先生でした。木下先生を講師として、千葉県女性外来担当医師の漢方勉強会が2002年12月に始まりました。
木下先生の講義の内容は、ちょっと型破りの気の張らない雑談がたっぷりというもの。明日からの臨床に役立ててもらおうという木下先生の想いがしっかりと伝わって来ました。みごとな講義でした。それから足掛け15年、千葉から始まった女性医師のための漢方セミナーは、「入門セミナー(入門編)」「アドバンスセミナー(フォローアップ編)」「ステップアップセミナー(上級編)」と医師の習熟度に沿ったセミナーと変わり、年に数回、1泊2日で全国的に展開されました。セミナーの特徴は「このセミナー内容をマスターすることで、女性外来を受診し、漢方薬を必要とする患者の疾患ほとんどに対処できるようにする」とプログラムが組まれていたことです。
入門セミナーでは、田代真一昭和薬科大学教授が、科学の切り口から「漢方は何故効くのか」を講義され、私は女性外来の現状や性差医学のトピックスを話し、木下優子先生が漢方(概論、基礎知識、領域別の治療)の講義と実技指導をされました。夕食後は、参加した医師同士の情報交換や、講師を交えて困っている症例についての意見交換が行われました。
アドバンスセミナーは、入門セミナーを終了した医師のための領域別(呼吸器、痛み、婦人科疾患、精神科、消化器、皮膚科など)セミナー。講師は、漢方については木下優子先生、内科疾患の性差については天野。
ステップアップセミナーはさらに上級を目指す医師のためのセミナーで、木下優子先生ならびに全国で活躍されている漢方の名医をお呼びしての授業。このクラスの中からは多くの日本東洋医学会漢方専門医が誕生しました。
2016年10月、突然木下優子先生の訃報が届きました。享年47歳。
入門セミナーは全40回、アドバンスセミナーは全23回で終了となりましたが、ステップアップセミナーは、2022年現在も1年に1回開催され、新たなメンバーも増え、各地で女性外来の担当医として、漢方セミナーの講師として活躍しています。
私も、20年間漢方の講義を聞き続けてきましたが、その奥行きの深さにはまだ追いつけていません。どうも、頭のほうは新しい記憶をとどめていることが難しくなってきているようで、最近は講義の最中に感動した内容について、正確に知人・友人に伝えることに自信が無くなっている有様です。しかし、後輩には言っています。「医療を極めようとしたら、東洋医学、中でも漢方はきちんと学ぶべきだと思います」と。
*narrative-based medicine: 患者が語る病の体験を、医師が真摯に聞き、理解を深め、また対話を通して問題解決に向けた新しい物語を創り出すこと。医療の質の向上、治療の促進が期待されます。科学的根拠に基づく医療(EBM:Evidence-based Medicine)を補完するものとして提唱されています。
*「心身一如」(しんしんいちにょ):身体と精神は一体であって、分けることはできず、一つのものの両面にすぎないという仏教の考え。
*「未病を防ぐ」:漢方治療は、西洋医学的検査で異常がないか、異常があっても病名がつかない段階(未病)から対応できます。
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その際に、野出教授が「次回はZoomでの開催となります」とアナウンスされたときには、正直に言って「来年はさすが大丈夫でしょう?」と思いました。しかし、昨年末から始まったオミクロン株の感染は、先例のない速さで感染暴発を続け、野出教授の判断が間違いのなかったことが証明されました。やっと少しずつ感染者数が減ってきて、ほっとしているところです。
しかし、コロナは決して悪いことばかりではなかったと私は思っています。日本におけるデジタル化が、明らかに加速しています。私は、医師という職業柄、毎日職場へ出かけていましたが、私の娘たちは、現在も基本テレワークが続いており、「こうなってみると、通勤時間が要らないのは、正直有難い。テレワークで済むことが、どれだけ多かったかということがよく分かった。これだったら、家事との両立もこなせる」と、つぶやいています。私自身も、講演で各地へ出かける必要がなくなったことで、本当に気持ちに余裕ができました。コロナ以前は、さすが今年で80歳を迎える私にとっては忙しすぎて、気持ちがせかされることが多くなっていたのです。
さて、肝心の第15回日本性差医学医療学会学術集会の話題に戻ります。この学会は2002年に私が「性差医療・医学研究会」として立ち上げ、2008年に日本性差医学医療学会として発展進化しました。
初代の理事長は、日本で最初に国立大学医学部付属病院に女性外来を立ち上げてくださった鹿児島大学医学部第一内科 鄭 忠和教授でした。
その後、二代目理事長を東北大学医学部循環器内科 下川宏明教授が務められました。下川教授は、血管とエストロゲンの関係を長きにわたって研究され、2017年には、国際性差医学会の理事として、仙台に、多くの海外の研究者をお招きし、第8回国際性差医学会学術集会を開催されました。日本と世界の性差医療に関心を持つ研究者の橋渡しをしてくださいました。
今回の第15回日本性差医学医療学会学術集会では、理事長が下川教授から東京大学医学部老年内科 秋下雅弘教授へバトンタッチされました。秋下教授も性ホルモンと血管疾患について研究を続けてこられた研究者です。先般本学会が行なった「認定医・認定指導士育成のためのクラウドファンディング」を始めとして、今後の性差医学・医療を支える人材育成に非常に熱心に取り組んでくださっています。
今回の演題の中で、私が一番感慨深かったのは、鄭 忠和先生による「超高齢社会における和温療法の展開」というお話です。鄭先生は鹿児島大学を卒業されてからしばらく東京大学医学部第二内科坂本研究室で私と机を並べて研究をしていらっしゃいました。その後、米国へ留学され、Tei indexを始めとする多くの業績をひっさげて、鹿児島大学へお戻りになられました。
1989年に、鹿児島大学医学部付属病院霧島リハビリテーションの講師に就任され、そこで心不全のため入院治療が2年にわたる患者さんと遭遇しました。その頃は、心不全の患者は入浴禁止とされており、鄭先生は「なぜ、入浴禁止なのだろう?入浴させてあげたい」という気持ちから、入浴時の循環動態を学生さんを被験者として検討。自信をもって、温泉の水をたっぷり満たした患者用機械浴で、患者さんに温泉入浴を体験させてあげたのです。その患者さんは、その後毎日機械浴での温泉を楽しみ、数ケ月後には退院できたということです。その事実から、鄭先生の和温療法研究が開始されました。私自身、自分の更年期症状のひどかった時に、最も効果的だった治療が入浴だった(入浴後2時間ほど、全ての不快な更年期症状が消えました)ことから、彼の研究を常に応援してきました。体を温めるということは、それほどすごいことなのです。
2006年には、私が初めて遭遇した慢性疲労症候群の20代のお嬢さんを千葉県から鹿児島大学医学部付属病院に送りました。その方が6ケ月後、元気に自分の足で歩いて、飛行機に乗り、千葉県へ戻られてきたときの感動は忘れることができません。2009年、私は千葉県衛生研究所を定年退職し、東京大学医学部時代の同級生だった野中泰延先生の亡くなられたお父様が開院された静風荘病院へ就職しました。理由は、女性外来と和温療法をやらせていただけるというお話だったからです。幸いに、そのおかげで、私は現在も医療の中での研究を続けることができています。
和温療法は、2020年4月に「心不全に対する遠赤外線温熱療法」として新規保険採用されました。しかし、和温療法を心不全だけにとどめておくのは、本当にもったいないと思っています。私自身は、最初からひょっとして何らかの効果があるかもしれないということで、体調不良を訴える高齢者、パーキンソン病などの神経難病の方など多くの患者さんに和温療法を試していただき、その素晴らしい効果を実感しています。
下記の図は、鄭先生によるものですが、これほど多くの疾患に副作用もなく、安心・安全で、リラックスした状態で受けることができる治療法はありません。
これからの私の残る人生は、2つの目的に捧げるつもりです。
1つ目:女性が心身健康で一生を送ることができるよう支える医療を推し進めること
2つ目:一家に1台和温療法器がある生活を目指して、和温療法の普及に力を尽くすこと
これからも、自分の健康管理をしながら頑張りたいと思いますので、応援をよろしくお願いします。

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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
12月末からじわじわとオミクロン株によると思われる感染者数が増えています。今までの第1波から第5波までのコロナ感染者数の推移を見てみますと、毎回上昇し始めてからほぼ4か月で収束するというサイクルのように見えます。
NHKが14日午前3時時点でまとめたところによると、オミクロン株の感染は、日本を含め世界の65の国と地域で確認され、短期間に全世界に急拡大しているとのことです。
WHO=世界保健機関は、オミクロン株の市中感染が確認されている国では、感染者数が倍増するまでの時間が1.5日から3日と速くなっているとしていて、テドロス事務局長は12月20日の記者会見で「デルタ株よりも著しく速いスピードで広がっているという一貫した証拠がある。ワクチンを接種した人や感染して回復した人が感染することもあるようだ」と述べ、警戒を呼びかけています。南アフリカでは、再感染のリスクが11月にはそれ以前と比べて2.39倍になっているとする研究報告があり、WHOも、データがさらに必要だとしていますが、初期段階のデータでは再感染のリスクは上がっているとみられるとしています。
オミクロン株の重症化率については、アメリカのCDC=疾病対策センターが、12月10日に出した報告では、アメリカ国内でのオミクロン株の症例は多くが軽症だとしています。しかし、慶応大学医学部 小崎健次郎教授によれば、オミクロン株では、感染するときの足がかりになる表面にある突起部分、「スパイクたんぱく質」にある変異がおよそ30と、デルタ株などの3倍ほどあるほか、ウイルスが増殖する際に必要な酵素に関わる遺伝子の変異も起きているということです。感染した場合に重症化するのか、それとも軽症でとどまるのか、まだまだ、詳しく調べる必要があるようです。
私たちが一番知りたいオミクロン株に対するワクチン効果については、「スパイクたんぱく質」にある変異が多いことが、ワクチンの有効性に大きな影響を与えるのではないかと懸念されていますが、コロナmRNAワクチンを開発したファイザーやモデルナは、3回目の接種を行うことで、ウイルスの働きを抑える中和抗体の値は上がり、オミクロン株に対しても十分な効果が期待できるとする実験の結果を発表しています。
アメリカの製薬大手ファイザーとドイツのビオンテックは2021年12月8日、共同開発した新型コロナウイルスワクチンのオミクロン株に対する効果について、研究室で行った初期的な実験結果を発表しました。それによりますと、ワクチン接種を受けた人の血液中にあるウイルスの働きを抑える中和抗体の効果は、2回の接種を受けた人では、従来のウイルスに対する場合と比べ大幅に減少していました。しかし、3回目の追加接種を受けた人では、中和抗体の効果は2回接種の場合の25倍になり、従来のウイルスに対する効果と同じ程度に高まっていたということです。
モデルナは2021年12月20日、新型コロナウイルスワクチンのオミクロン株に対する効果について、研究室で行った初期的な実験結果を発表しました。それによりますと、ワクチンの接種を2回受けた人の血液中では、ウイルスの働きを弱める中和抗体の効果が、オミクロン株に対しては従来のウイルスに比べて低下していました。しかし3回目の追加接種を受けたあとでは、中和抗体の効果は大幅に上昇し、日本やアメリカで3回目の接種に使われる50マイクログラムの接種ではおよそ37倍になったほか、最初の2回の接種と同じ100マイクログラムではおよそ83倍になったということです。
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