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心療内科と精神科はどう違うのか

私の外来を受診される方は、100%近く、すでに、内科、産婦人科、整形外科、脳神経内科などを受診しておられます。しかし、種々の検査で異常が発見されず、医師の治療効果も乏しいとき、医師から、「心療内科に行かれてはどうでしょうか?」とか、症状に抑うつや、不眠が重なると、精神科受診を勧められている方もいます。患者さんから「精神科と心療内科はどう違うのですか?私はどちらを受診したらいいのでしょうか?」と聞かれることも再三です。そこで、30人ほどの患者さんに心療内科と精神科はどう違うのかご存じですか?と聞いてみました。全員が「分かりません」というお答えでした。

 

そこで、今日は「精神科と心療内科の違い」についてお話したいと思います。

心療内科と精神科はいずれも「心が原因となる病」を治しますが、簡潔に言いますと、下記のように説明できます。

1.精神科は、心が主な原因となり、「眠れない、不安、うつ、人と会うのが嫌、幻覚、幻聴、妄想」などの心に関わる症状で困っている方を取り扱います。

2.心療内科は、心が主な原因となり、「しんどい、怠い、痛い、血圧があがった、喘息が悪化した、糖尿病が悪化した」など、身体の不調が出現又は悪化した方を取り扱います。一般的に心身症と言われる症状の方です。

 

医学の歴史の中で、精神科は長い歴史を有します。

一方、心療内科が日本に登場したのは、1961年、九州大学医学部に精神身体医学研究施設が設置されたことに始まります(約60年前ですね)。1963年には精神身体医学講座に昇格し、心理療法も併せ行う内科という意味で、診療科名を「心療内科」として、診療を開始し、初代教授に心身医学のパイオニアである池見酉次郎先生が就任されました。

私は、1967年に東京大学医学部を卒業しましたが、その時には、まだ心療内科は講座としてはありませんでした。1972年に東京大学医学部分院(文京区目白台にありました)に心療内科が診療科として開設され、1984年に、石川 中先生が初代診療科教授に就任されました。1986年に第2代末松弘行教授が就任された後、1993年に心身医学講座に昇格しました。1996年には、第3代久保木富房教授が就任されましたが、東京大学医学部付属病院の分院と本院の統合が進み、2001年6月22日に、分院は閉院され、心療内科は本院へ移転しました。その後、2005年に第4代赤林朗教授が就任され、現在に至ります。現在、東京大学医学部心療内科科長は吉内一浩准教授が担当されていますが、今回、東京大学医学部心療内科のホームページを開けてみましたら、吉内先生の「科長ご挨拶」が、とても分かりやすく心療内科の立ち位置を説明していますので、ご紹介したいと思います。

 

科長ご挨拶 | 当科について | 東京大学医学部附属病院 心療内科 (umin.ac.jp)

当科は、全国でも数少ない「心療内科学」の教室として、最新の知見を取り入れながら、最適な医療の提供と、そのための研究と教育を日々行っております。

ちなみに、「心療内科」という言葉だけは有名になっていますが、本当の「心療内科」はまだまだ知られていないということを感じております。「心療内科」は、ストレス関連疾患、特に「心身症」を診療する診療科として、わが国において、1963年に九州大学に誕生しました。この「心身症」という病気は、ストレスが関連する「身体疾患(からだの病気)」で、「精神疾患(こころの病気)」ではありません。

心療内科の専門性は、大きく分けて、2つあると考えております。

1つ目は、「患者さんを全人的に理解する」ということです。つまり、心身両面の評価と、さらに、「こころ」と「からだ」の関連を評価することによって、疾患・症状だけではなく、環境をも含めた患者さん全体を理解する努力を行います。つまり、心理・精神面の評価と身体面の評価を個々に行うことだけでは得られない、心身相関の評価とアプローチという部分を含み、これは、心身医学という学問を基盤に持つ「心療内科」ならではの専門性ということが言えます。

2つ目は、薬物療法以外に心理療法を用いるという点です。心療内科が「心理療法を併用する内科」という名前の由来を持つ通り、心療内科医は、複数の心理療法に精通し、患者さんの状態に合わせて併用することができます。具体的には、生活習慣病などの「心身症」の患者さんを中心とした「行動変容」から「ストレスによって心身に不調を来した」状態まで対応可能です。

このように、心療内科の専門性が「特定の疾患」ではない点で、分かりにくくなっています。しかし、今後の医療においては、「治癒からケア」の比重が大きくなることが予想され、医療費削減の観点からも心理療法のトレーニングを受けた心療内科医が現代の医療に寄与できる部分は大きいと自負しております。

そして、東京大学医学部附属病院心療内科では、大学病院という特性を活かし、より専門性の高い診療・教育・研究を行っています。

診療に関しては、心身症の他に、身体的合併症が生命の危険にもつながる摂食障害、薬物療法だけでは治療が難しい生活習慣病、心身相関の要素が大きい「がん患者さんのこころのケア(サイコオンコロジー)」に力を入れています。

教育に関しては、卒前・卒後を含めて、心療内科に関する教育を、学内外の医学生、医師に加えて、心理士等にも積極的に行っております。

研究に関しては、従来の医療を変えるべく、IT機器を用いた臨床研究を中心に行っております。

「目の前の患者さん、ご家族はもちろん、社会のために貢献をしよう」という理念のもと、最適な医療の提供を行うよう努力するとともに、「新しい医療を創る」という目標を共有して、教室員が一丸となって日々精進しておりますので、引き続き、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

科長 吉内 一浩

東京大学医学部心療内科科長吉内先生のご挨拶を引用させていただきましたが、心療内科がどのような患者さんにどのような治療を行っているのかをお分かりになっていただけましたでしょうか?

心療内科が扱う病気や障害としては、自律神経失調症、片頭痛、仮面うつ病、不登校・出社拒否、発達障害、過換気症候群、パニック障害、摂食障害、円形脱毛症、緩和ケアなどがあげられます。

 

精神科は精神疾患を専門に扱う診療科です。扱う疾患名としては、うつ病、躁うつ病、適応障害、統合失調症、認知症、解離性障害、強迫性障害、睡眠障害、摂食障害、パーソナリティ障害、発達障害、パニック障害、PTSD、アルコールや薬物の依存症などがあります。睡眠障害や摂食障害など、心療内科とかぶるところもあります。

 

ストレスが原因で心身の不調を感じ、内科などを受診しても異常が見当たらない場合、心療内科と精神科のどちらを受診したらいいのか迷うようでしたら、診療科目に心療内科・精神科の両方を含んでいる病院への受診をお勧めします。

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