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第15回日本性差医学医療学会学術集会

2022年2月19日、20日の2日間にわたって、第15回日本性差医学医療学会学術集会が佐賀大学医学部循環器内科 野出孝一教授を会長として開催されました。昨年、東京で第14回の学術集会(会長:東京大学医学部老年内科の秋下雅弘教授)が開催されましたときは、当初は対面での予定だったのですが、コロナ感染症の影響を受けて、対面+Zoomのハイブリッド形式で行われました。

 

その際に、野出教授が「次回はZoomでの開催となります」とアナウンスされたときには、正直に言って「来年はさすが大丈夫でしょう?」と思いました。しかし、昨年末から始まったオミクロン株の感染は、先例のない速さで感染暴発を続け、野出教授の判断が間違いのなかったことが証明されました。やっと少しずつ感染者数が減ってきて、ほっとしているところです。

 

しかし、コロナは決して悪いことばかりではなかったと私は思っています。日本におけるデジタル化が、明らかに加速しています。私は、医師という職業柄、毎日職場へ出かけていましたが、私の娘たちは、現在も基本テレワークが続いており、「こうなってみると、通勤時間が要らないのは、正直有難い。テレワークで済むことが、どれだけ多かったかということがよく分かった。これだったら、家事との両立もこなせる」と、つぶやいています。私自身も、講演で各地へ出かける必要がなくなったことで、本当に気持ちに余裕ができました。コロナ以前は、さすが今年で80歳を迎える私にとっては忙しすぎて、気持ちがせかされることが多くなっていたのです。

 

さて、肝心の第15回日本性差医学医療学会学術集会の話題に戻ります。この学会は2002年に私が「性差医療・医学研究会」として立ち上げ、2008年に日本性差医学医療学会として発展進化しました。

初代の理事長は、日本で最初に国立大学医学部付属病院に女性外来を立ち上げてくださった鹿児島大学医学部第一内科 鄭 忠和教授でした。

 

その後、二代目理事長を東北大学医学部循環器内科 下川宏明教授が務められました。下川教授は、血管とエストロゲンの関係を長きにわたって研究され、2017年には、国際性差医学会の理事として、仙台に、多くの海外の研究者をお招きし、第8回国際性差医学会学術集会を開催されました。日本と世界の性差医療に関心を持つ研究者の橋渡しをしてくださいました。

 

今回の第15回日本性差医学医療学会学術集会では、理事長が下川教授から東京大学医学部老年内科 秋下雅弘教授へバトンタッチされました。秋下教授も性ホルモンと血管疾患について研究を続けてこられた研究者です。先般本学会が行なった「認定医・認定指導士育成のためのクラウドファンディング」を始めとして、今後の性差医学・医療を支える人材育成に非常に熱心に取り組んでくださっています。

 

今回の演題の中で、私が一番感慨深かったのは、鄭 忠和先生による「超高齢社会における和温療法の展開」というお話です。鄭先生は鹿児島大学を卒業されてからしばらく東京大学医学部第二内科坂本研究室で私と机を並べて研究をしていらっしゃいました。その後、米国へ留学され、Tei indexを始めとする多くの業績をひっさげて、鹿児島大学へお戻りになられました。

 

1989年に、鹿児島大学医学部付属病院霧島リハビリテーションの講師に就任され、そこで心不全のため入院治療が2年にわたる患者さんと遭遇しました。その頃は、心不全の患者は入浴禁止とされており、鄭先生は「なぜ、入浴禁止なのだろう?入浴させてあげたい」という気持ちから、入浴時の循環動態を学生さんを被験者として検討。自信をもって、温泉の水をたっぷり満たした患者用機械浴で、患者さんに温泉入浴を体験させてあげたのです。その患者さんは、その後毎日機械浴での温泉を楽しみ、数ケ月後には退院できたということです。その事実から、鄭先生の和温療法研究が開始されました。私自身、自分の更年期症状のひどかった時に、最も効果的だった治療が入浴だった(入浴後2時間ほど、全ての不快な更年期症状が消えました)ことから、彼の研究を常に応援してきました。体を温めるということは、それほどすごいことなのです。

 

2006年には、私が初めて遭遇した慢性疲労症候群の20代のお嬢さんを千葉県から鹿児島大学医学部付属病院に送りました。その方が6ケ月後、元気に自分の足で歩いて、飛行機に乗り、千葉県へ戻られてきたときの感動は忘れることができません。2009年、私は千葉県衛生研究所を定年退職し、東京大学医学部時代の同級生だった野中泰延先生の亡くなられたお父様が開院された静風荘病院へ就職しました。理由は、女性外来と和温療法をやらせていただけるというお話だったからです。幸いに、そのおかげで、私は現在も医療の中での研究を続けることができています。

 

和温療法は、2020年4月に「心不全に対する遠赤外線温熱療法」として新規保険採用されました。しかし、和温療法を心不全だけにとどめておくのは、本当にもったいないと思っています。私自身は、最初からひょっとして何らかの効果があるかもしれないということで、体調不良を訴える高齢者、パーキンソン病などの神経難病の方など多くの患者さんに和温療法を試していただき、その素晴らしい効果を実感しています。

 

下記の図は、鄭先生によるものですが、これほど多くの疾患に副作用もなく、安心・安全で、リラックスした状態で受けることができる治療法はありません。

 

これからの私の残る人生は、2つの目的に捧げるつもりです。

1つ目:女性が心身健康で一生を送ることができるよう支える医療を推し進めること

2つ目:一家に1台和温療法器がある生活を目指して、和温療法の普及に力を尽くすこと

 

これからも、自分の健康管理をしながら頑張りたいと思いますので、応援をよろしくお願いします。

 

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