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女性と骨粗しょう症

骨粗しょう症の原因は、大きく分けて2つになります。
1つ目は、原因となる病気がなく、加齢や閉経、生活習慣などにより起こる「原発性骨粗しょう症」。
2つ目は、特定の疾患や薬などによる「続発性骨粗しょう症」です。
今日は、「原発性骨粗しょう症」の治療についてのお話です。

女性ホルモンのエストロゲンには、骨吸収を緩やかにする効果があります。女性は、50歳ごろに閉経を迎えると、エストロゲンの減少のため骨吸収のスピードが上昇し、骨密度の低下に拍車がかかるようになります。

骨密度の低下だけでは、特に症状はありませんが、脊椎圧迫骨折や大腿骨近位部骨折を起こすと、受傷後の痛みや、安静による筋力低下などにより、歩行が困難となり、車いすや寝たきりになるかもしれません。女性外来では、閉経後一度も骨密度の測定をしたことがない方には、骨密度の測定をお勧めしています。骨密度の測定には、dual-energy X-ray absorptiometry(DXA法)を用いて、腰椎と大腿骨近位部を測定します。

「原発性骨粗しょう症」の診断は、低骨量をきたす骨粗しょう症以外の疾患、または続発性骨粗しょう症の原因を認めないことを前提として、「骨密度が若年成人平均値の70%以下」 または 「骨密度が若年成人平均値の70~80%(骨量減少)で、脆弱性骨折の既往を伴う」 場合に骨粗しょう症と診断されます。
若年成人平均とは、腰椎は20~44歳、大腿骨近位部は20~29歳の平均です。
脆弱性骨折とは、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折を言います。例えば知らないうちに腰椎骨折を起こしていたとか、くしゃみをしたら肋骨骨折になったなどです。

閉経後の骨粗鬆症の治療には、骨折を予防するための生活習慣の改善、内服薬や注射薬による治療があります。治療は原発性骨粗しょう症の診断基準を満たした場合、もしくは骨量減少症でも骨折の危険が高いと判断された場合に薬物療法が開始されます。
表1に、現在使われている骨粗しょう症治療薬の有効性の評価一覧を示します。

実は、現在家庭画報に「天野惠子先生のすこやか女性外来」を連載しています。10月号(8月に売り出されます)に骨粗しょう症を取り上げることになり、はじめて日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会、骨粗しょう症財団による「骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2015年版」を通読しました。そこで、自分が服用しているボノテオが「腰椎骨折は抑制するが、大腿骨近位部骨折については、抑制するとの報告はない」のC判定であることを知り、愕然としました。内科医は、ビスホスホネートはどの薬も同じ効果があると思っている医師が多いのではないかと思います。

骨密度について
A判定:骨密度の上昇効果あり
B判定:上昇するとの報告あり
C判定:上昇するとの報告はない

骨折発生抑制効果について
A判定:抑制する
B判定:抑制するとの報告がある
C判定:抑制するとの報告はない

出典:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 
2015年版、158ページ

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