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2020/09/06付け発行のメルマガ再掲記事です。

病気の発症やメカニズムには、男女で大きな差があります。動脈硬化を例にとりますと、女性では女性ホルモン(エストロゲン)が動脈硬化の進展を抑制していますので、喫煙や糖尿病というリスクを抱えていないかぎり、閉経前に動脈硬化を来すことがありません。一方、男性では、20代から既に動脈硬化が粛々と進んでいます。薬の効き方や副作用の出方にも男女差があります。

 

私は、2002年に性差医学における教育と学際的な研究の促進を目指し「性差医学医療研究会」を発足させ、2004年に第1回の学術集会を開催しました。2008年には、この会は「日本性差医学医療学会」へと発展しています。

 

同じく2002年には、「性差医療・医学の実践の場としての女性外来」を担当している女性医師のための研修を目的とした「性差医療情報ネットワークNAHW(New Approach to Health and Welfare)」をも立ち上げました。女性外来は、2001年5月には鹿児島大学で、そして9月、11月には千葉県立東金病院、東京顕微鏡院で「性差医療の実践の場」として立ち上げられ、その理念と実践は、日本全国の多くの女性の支持を得て、2004年12月末には47の都道府県全てで同様な女性専用外来が立ち上がりました。

内科医が中心のもの、産科・精神科・内科医の連携を中心として複数の科が協力した One-stop Shopping 型のもの、働く女性にターゲットを置いたもの、地域特性をいかしたものなど、其のあり方には多様性が認められます。その後女性外来は、多くの女性医師の努力と信念の下、徐々にではありますが、広がってきています。

 

2020年、女性外来が初めて日本で立ち上げられてから、約20年が経ちました。医師国家試験における女性医師合格率も30%を超えて、多くの女性医師が産婦人科、外科系の分野で活躍しています。遠くない近未来に、医療の現場には「エビデンスに基づいた性差医療」の姿勢が組み込まれていくことは間違いありません。金沢医科大学 女性総合医療センター、福島県立医科大学 性差医療センター、東京女子医科大学 女性センターなど、医科大学でも系統的な授業・診療を取入れ成功している医療施設が少しずつ出てきました。

 

今までは、医療を行う側での性差医学・医療の普及に力を入れてきましたが、これからはもっと多くの方々に医療の現場における性差の視点について気付いていただければと思いました。

さらに、

患者さんたち自身にも性差医療の知識やご自分の身体のことを知ってもらわなければいけない

患者さんたちの主治医は皆さん自身である

ということをもっと広げていかなければならないと感じ、女性外来オンラインを立ち上げました。

皆さんの健康の維持のためにお役に立つことができれば幸いです。

各地域の女性外来の情報については、現在のところはNAHWのホームページに掲載されていますのでご覧になってください。

 

特定非営利法人性差医療情報ネットワーク 理事長/女性外来オンライン 主宰 天野 惠子

 

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