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前回、新型コロナウイルスに関する官邸の記事を紹介しました。新型コロナウイルスの感染の仕方については、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染の2つが考えられ、感染症対策としては「3つの密(密閉・密集・密接)」の回避、マスクの着用、石けんによる手洗いや手指消毒用アルコールによる消毒や咳エチケットの励行が有効ですとお話しました。

 

昨年の末に、近畿大学環境医学・行動科学教室の研究チームが、医療現場における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染リスクを「空気感染」「飛沫感染」「接触感染」の経路別に推算するモデルを構築しました。そして、患者と医療従事者が近接する状況下でのSARS-CoV-2感染リスクへの寄与率を数値化し、報告しました。その結果、主な感染経路は飛沫感染ですが、接触感染や空気感染の可能性もあることが明らかとなりました

 

想定した感染経路は、患者と近接時(0.6m間隔)に(1)患者の呼吸による飛沫核を直接吸入する空気感染(2)患者の咳による飛沫核を直接吸入する空気感染(3)患者の飛沫を直接吸入する飛沫感染(4)患者の飛沫が顔の粘膜に直接付着する飛沫感染(5)患者の飛沫が付近にある物体の表面に付着し、手指を介して顔の粘膜にウイルスが付着する接触感染(6)手指に直接患者の飛沫が付着し、手指を介して顔の粘膜にウイルスが付着する接触感染-の6つです。

 

全体の経路の感染リスクに対する各経路の寄与率は、(4)の飛沫感染が寄与率60~86%と最も高く、次いで(5)の接触感染が9~32%でした。さらに、患者の唾液中のウイルス濃度が高くなると、空気感染リスクの寄与率は上昇しました。

 

また、感染リスクは医療従事者がサージカルマスクを着用した場合は63~64%、フェースシールドを着用した場合は97~98%、両方を着用した場合は99.9%以上いずれも低減できるとしています。さらに、感染リスクは患者がサージカルマスクを着用した場合は99.99%以上低減し、サージカルマスクを着用した上で換気回数を毎時2回から6回に増やした場合は、その半分以下になることも試算されました。

図. SARS-CoV-2 感染リスクに対する経路別寄与率

(近畿大学プレスリリース)

 

研究チームは「以上から、SARS-CoV-2感染予防においては、医療現場では医療従事者がサージカルマスクやフェースシールドを着用することの有用性および患者がサージカルマスクを着用し、換気を適正に保つことの重要性が示された」と結論し、今回の研究成果について「接客を伴う飲食や介護現場など、人と人とが近接する場面での感染対策に応用されることを期待している」と付言しています。この図から分かったことは、マスクやフェースシールドの感染予防効果がきれいに証明された研究と言えます。

新型については、政府の専門家会議は「空気感染は起きていない」としており、屋外で感染者と黙ってすれ違う程度であれば感染の危険性は低いとしています。また、同会議は「手を伸ばして相手に届かない程度の距離をとって会話をすることなどは感染リスクが低い」とも呼びかけています。注意が必要なのは、歌を歌う▽大声を出す▽討論する-といった行為。これらは普通の会話と違い強い呼吸を伴うため、ウイルスが増殖する部位の肺胞などからウイルス濃度の高い飛沫が大量に出やすいため、その結果、カラオケボックスなど密閉空間を感染者を含む多人数で共有すれば、患者集団(クラスター)が発生するリスクが高まると考えられますね。

【参考】

Environ Int 2020; 147: 106338

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