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新型コロナウイルスの感染が中国・武漢で初めて確認されてから1年以上が過ぎ、後遺症の実態が徐々に明らかになってきています。新型コロナ感染症後の遷延した症状はLong COVID と呼ばれ、単一の病態ではなく、実際には下記の4つの病態が複合的に絡み合った病態ではないかと言われています。

  • 肺、心臓への恒久的障害
  • 集中治療後症候群
  • ウイルス後の慢性疲労、慢性疲労症候群
  • 持続するCOVIDの症状

 

中国からの報告:2021年1月16日、医学雑誌 Lancetに、武漢市のJin Yin-tan病院から2020年1月7日~5月29日に退院した2469人のCOVID-19患者を対象に実施された新型コロナウイルス感染における退院後フォローアップ調査の結果が掲載されました。フォローアップ前に死亡した人、精神病性障害や認知症、または再入院のためフォローアップが困難な人、骨関節症で移動が困難、または退院前後に脳卒中や肺塞栓症などの疾患により寝たきりの状態となった、試験参加を拒否した、連絡が不可能だった、武漢市外に居住または介護・福祉施設に入居で移転された等の理由で、フォローアップができなかった736人が調査から除外され、残る1733人のフォローアップ結果です。

Huang C, et al. Lancet. 2021;397:220-232.

フォローアップ検査は2020年6月16日~9月3日に行われ、症状発症後の追跡期間の中央値は186.0日(175.0~199.0)です。1733人の対象患者は、入院中の重症度スケール(7段階評価)に応じて3群に分類されました。スケール3(酸素補給不要)が439人、スケール4(酸素補給を要する)が1172人、スケール5~6(5:高流量鼻カニューレ、非侵襲的人工換気を要する、6:体外式膜型人工肺、侵襲的人工換気を要する)が122人でした。全員に対し、退院後の症状、健康関連の生活の質(QOL)などに関する質問と、身体検査、6分間歩行テスト、血液検査が実施されました。また、3群からランダムに抽出した390人について、肺機能検査、胸部高分解能CT、下肢及び腹部の超音波検査が行われています。

結果は、年齢の中央値は57.0歳(47.0~65.0)、男性が897例(52%)でした。 身体症状としては、何らかの症状が認められた患者が1265/1655例で76%に上りました。最も多くの患者に認められた症状は、倦怠感または筋力低下63%、1,038/1,655例)、続いて睡眠障害26%、437/1,655例)、脱毛22%、359/1655例)、嗅覚異常11%、176/1655)、関節痛や動悸9%食欲不振8%味覚異常7%でした。不安・うつ症状を訴える人も23%(367/1,617例)に上っています。

また、入院中の症状が重症だった患者では、肺の拡散障害および画像所見の異常がより深刻であることも示され、著者は「これらの集団では、長期的な回復介入を必要とする」と述べています。


日本からの報告:日本からのLong COVIDに関する最初の報告は、2020年10月の国立国際医療研究センターからの報告です。

国立国際医療研究センターに入院していた新型コロナ患者に退院後に電話インタビューを行い、それぞれの症状の持続について詳細に聴取したものです。最終的に回答が得られたのは63人(日本人が9割)で、このうち酸素投与を受けた中等症患者が27%、人工呼吸管理を受けた患者が8%で、大半が軽症患者でした。発症から60日経った後にも、嗅覚障害(19.4%)呼吸苦(17.5%)だるさ(15.9%)咳(7.9%)味覚障害(4.8%)があり、さらに発症から120日経った後にも呼吸苦(11.1%)嗅覚障害(9.7%)だるさ(9.5%)咳(6.3%)味覚障害(1.7%)が続いていました。脱毛は、全体の24%で報告され、持続期間は平均76日。発症時には全く見られないものの、発症後30日くらいから出現し、120日くらいまで続くと報告されています。

 

最近話題となっているのが、感染症後に長期間に及ぶ疲労状態が取れない方々の存在です。ウイルスに感染した後に、ある程度の疲労、衰弱を感ずることはあらゆるタイプのウイルス感染症で認められます。場合によっては、完全に正常な健康状態に戻るまでに数週間~数ケ月かかることもあります。

コロナ回復患者を対象に早くから「後遺症外来」を開設しているヒラハタクリニックの平畑医師が、2021年2月に発売された週刊ポストに提供された資料を拝見すると、外来を受診した808人の症状は下記の表のようになっていたそうです。年齢・性別分布は、女性が58.7%、男性が41.3%で、10歳未満(6人)、10代(50人)、20代(153人)、30代(211人)、40代(238人)、50代(128人)、60代(21人)、70代(1人)です。平畑医師のコメントでは「国内の感染者は男性のほうが多いですが、後遺症患者は女性が男性の1.4倍ほど多い。症状の持続期間は人それぞれで、すでに1年近く続いている方もいる。今後も数年間、もしかしたら一生続く方もいるかもしれません」とのこと。

当院に来院された患者さんの中には、感染時は無症状や軽症だった方も多く、年齢は20~40代の若い人が多い」とも言われています。私自身は、慢性疲労症候群の患者さんを診ていますが、その診断基準に当てはまる方もいそうです。心の中で、和温療法をおやりになるといいのにと思っています。

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